JKA補助事業成果


補助事業番号:28-106
補助事業名 :平成28年度 ガラス製マイクロ流体デバイスを用いた金ナノ粒子の粒子径制御技術 補助事業
補助事業者名:関東学院大学理工学部理工学科機械学系 柳生裕聖


  1. 研究の概要
     金属ナノ粒子分散液を用いた配線用印刷インクは用途や印刷条件によってナノ粒子分散液中の金属濃度や粒子径を制御する必要がある。しかし金属イオンを溶液中で還元することで金属ナノ粒子を得ることができるビーカなどの化学実験用ガラス器具を用いた液相還元法による金属ナノ粒子の合成では、試薬の混合や攪拌のバラツキがあるため、合成される金属ナノ粒子の粒子径を高精度に制御することが困難である。また、金属濃度の調整が比較的容易な液相還元法によるナノ粒子の合成では酸性、塩基性の試薬を使用するため、デバイスは試薬に対し耐性を有するガラス製であることが好ましい。これらの課題を解決するために、本事業ではガラス製マイクロ流体デバイスを用いた金属ナノ粒子の合成を検討し、液相還元法を用いて、ナノ粒子の粒子径を制御可能なデバイスの開発を最終目標とする。本事業では最終目標を達成するための第1ステップとして、デバイスの流路パターンを単純なY字パターンとし、(1)デバイスに試薬を送液する速度の影響、(2)デバイス上の微細流路の形状の影響を明らかにする。(1)では流速により金属イオンと還元剤の混合速度が変化することが予想されるため,生成される金属ナノ粒子の粒子径と流速の関係を明らかにする。(2)ではアスペクト比(深さ/幅)の異なる流路を有するデバイスを作製し、微細流路の断面形状の影響を把握する。本事業によってナノ粒子の粒子径が制御できるデバイス(流路パターン、流路断面形状)、およびそのデバイスを用いたナノ粒子の合成条件が明らかとなる。

  2. 研究の目的と背景
     金ナノ粒子が合成可能なマイクロ流体デバイスの開発,およびデバイスを用いた粒子径制御技術を確立する。マイクロブラスト加工により作製した表面粗さの粗い流路を有するガラス製流体デバイスを用いた金ナノ粒子合成技術を確立することを目的とする。

  3. 研究内容
    1. 設備の導入
       シリンジポンプ3台(試薬の導入用),ドライエッチング装置(ガラス基板の親水化用)を設置した。

    2. デバイスの作製
       マイクロブラスト加工と熱圧着により,幅約200µm(深さ80µm),幅約400µm(深さ135µm)を有する2種類のY字型流路ガラス製マイクロ流体デバイスを作製した。また,デバイスとシリンジポンプをシリコーンチューブで接続するためのホルダを3Dプリンタで作製した。

    3. 合成実験
       作製したマイクロ流体デバイスを用いてクエン酸還元法により金ナノ粒子の合成実験(流量0.01mL/min〜0.1mL/min)を実施した。合成した金ナノ粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡により確認した。その結果,合成された金ナノ粒子の平均粒子径と粒度分布は流量に依存し,細い流路幅のデバイスで低流量で合成することで,粒度分布の小さい単分散金ナノ粒子を得ることができた。

  4. 本研究が実社会にどう活かされるかー展望
     ナノ粒子の粒子径制御技術,インクジェット技術により電子部品を製造するプリンタブルエレクトロニクスにおける印刷用インクとして用いられる金属ナノ粒子分散液の製造で重要となる。また,粒子径の均一な単分散ナノ粒子は金ナノ粒子の光学特性を応用したプラズモンセンサの高感度化により,医療・バイオ分野への応用も期待できる。

  5. 教歴・研究歴の流れにおける今回研究の位置づけ
     本事業にけるマイクロ流体デバイスによるナノ粒子の合成技術の研究は,本研究テーマにおける第1ステップであり,今後さらに詳細な研究を進めることで,本事業成果の実用化が期待できる。

  6. 本研究にかかわる知財・発表論文等

【発表論文】

  • Hiromasa Yagyu, Yu Tanabe, Satoru Takano, Mao Hamamoto: "Continuous Flow Synthesis of Monodisperse Gold Nanoparticles by Liquid-phase Reduction Method on Glass Microfluidic Device", Micro & Nano Letters (The Institution of Engineering and Technology), accepted.
  • Yu Tanabe, Hiromasa Yagyu: "Liquid-phase Reduction Synthesis of Mono-dispersed Gold Nanoparticles on Glass Microfluidic Device with Flow Rate Control", SPIE Photonics west BIOS Microfluidics, BioMEMS, and Medical Microsystems XV, San Francisco (January, 2017), Proceedings of SPIE Vol. 10061, 1006119 (2017).

【学会発表】

  • 田邊悠、山内佳祐、浜本真央、柳生裕聖:"マイクロ流体デバスを用いた金ナノ粒子合成における量の影響",関東学院大学理工/建築・環境学会研究発表講演論集, 横浜,(2016年11月), p. 22-23.
  • 田邉悠, 柳生裕聖:"ガラス製マイクロ流体デバイスを用いた金ナノ粒子合成における粒子径制御", 電気学会 第33回センサシンポジウム講演論文集, 平戸(2016年10月), 25pm4-PS-022.
  • 田邊 悠, 浜本真央, 柳生裕聖:"液相還元法による⾦ナノ粒⼦の合成と応⽤技術", 平成28年電気学会 電子・情報・システム部門大会講演論文集, 神戸, pp. 766-770(2016年9月).

 7. 補助事業に係る成果物
  当事業において作成したもの
  発表論文 (http://digital-library.theiet.org/content/journals/10.1049/mnl.2017.0126 )
  国際会議論文  (http://spie.org/Publications/Proceedings/Paper/10.1117/12.2249086?origin_id=x4318 )

 8. 事業内容についての問い合わせ先
  所属機関名: 関東学院大学理工学部理工学科機械学系材料加工プロセス研究室
  住   所: 〒236-8501
  神奈川県横浜市金沢区六浦東1-50-1
  代表者: 准教授 柳生裕聖(ヤギュウヒロマサ)
  E-mail: yagyu@kanto-gakuin.ac.jp
  URL : http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~yagyu

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シリンジポンプドライエッチング装置


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デバイス(ホルダ付)金ナノ粒子(幅200µm,0.05mL/min)

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Last-modified: 2017-05-31 (水) 19:58:56 (2521d)